トラウマを抱えていたり、PTSDになったりすると日常生活を著しく阻害するようなさまざまな症状が出てきます。ここでは、トラウマやPTSDの治療にはどんなものがあるかを説明していきます。
トラウマとPSTDの違いについては別の記事で紹介しましたが、ここでは過去のショッキングな出来事により現在支障を感じているかたに、その対象法を広く知っていただくために書きます。ですから、時として医療上や学術上の厳密なルールから少し外れていることもあることをご容赦ください。
PTSDの治療にはいくつか種類がありますが、下記のような方法が一般的といえます。
まず、専門の医師に話を聞いてもらい、診察の中で自分の状態や症状について詳しく説明してもらうことができます。自分がトラウマを抱えているのか、症状があるのかは、自分でジャッジすることは難しいですから、専門家に判断してもらうことが良いでしょう。また、症状に合わせていくつかの薬を試してみることができます。PTSDには不快な症状が伴いますから、その症状の緩和や軽快ができれば、生活の質の向上につながります。
トラウマや症状の有無について、カウンセラーやセラピストに相談するという方法もあります。多くの精神科クリニックは患者さんがたくさんいて、混んでいたり、診察の時間が限られています。カウンセリングは予約時間ちょうどに始まりますし、決められた時間ゆっくりと話を聞いてもらいたい人には向いているでしょう。カウンセラーは医師ではありませんので薬の処方はしません。しかし、薬に抵抗がある方や、薬以外のオプションをお探しの方には良いと思われます。
PTSDに特化した心理療法がいくつかありますので、その技術を習得した心理療法家(カウンセラーやセラピスト)にかかってそれらを受ける方法があります。諸説ありますが、トラウマを根治する唯一の方法ではないかと思います(他の方法は対症療法や日常生活の質の向上に重きをおいており、トラウマそのものにアプローチはしません)。
方法 | どんなことをやるか |
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暴露療法(PEなど) | セラピーの中で一定期間「不快感情(恐怖や嫌悪など)」に安全に自分を曝し、それに慣れるという人間の能力や強さを活かした療法。具体的にはセッションの中で不快感情を喚起させるトラウマエピソードについて繰り返し語り、そこから逃げることなく一定時間感情と身体感覚にフォーカスする。 |
認知行動療法(CPTなど) | トラウマの中で生じる自罰的で「ゆがんだ認知」に焦点をあて、それを現実的で受け入れやすいものに変化させていく方法。具体的にはトラウマエピソードについて「何が起こったか」と「なぜそれが起こったか」を書き出し、セラピストとともにその中のゆがんでしまった認知を探し出したうえで、より現実的で生産性のある認知を考えていく。 |
EMDR | 眼球運動を用いて過去のトラウマ体験を処理をすすめていく心理療法のひとつ。脳がリラックスしているときの眼球運動を再現する。具体的にはセラピストがクライアントの顔の前に指先などを示し、そこに眼球の焦点を合わせるエクササイズを行う。 |
自分を苦しめるトラウマを治療したいと思ったとき、やっぱりベストな方法が選べたらいいですよね。上記ではその一般的な方法を紹介しましたが、まずはチョイスとして知っておくことが大事だと思います。そのうえで、自分のトラウマがどんな種類のもので、どの方法が向いているか、そしてどのくらいの時間がかかるのか、その判断はなかなか難しいので、できれば専門家に相談しながら決めていくことをおすすめします。
しかし、残念ながら相性や方向性の違いがあり、相談がうまくいかないこともあります。せっかく勇気を出して相談に行っても「大したことじゃない」、「PTSDとはいえない」と言われてしまったら、心が折れてしまいますよね。人の心の悩みは個別に違うものですから、あなたがしんどいと思ったら、それは「大したこと」です。医療的にPTSDであろうとなかろうと、それを取り扱わない人は「専門家」とはいえません。気にせず、別の人を探してください。
ポラリスカウンセリングオフィスにはトラウマ治療を得意とするカウンセラーが在籍しています。もしご希望の際や、さらに詳しい説明が必要な場合はお気軽にお問い合わせください。
文責:湯浅紋(臨床心理士・公認心理師・心理学博士)